はじめまして。
健康はなくして初めてありがたみが分かると言いますよね。
私も歯だけではなくて、色々気をつけないと・・・
・無髄歯の寿命について
お察しの通り、個人差は激しく幅は広いです。
例えば、「有髄歯と無髄歯の寿命の比較」をしようとすると、人を使って右と左に分けてどちらか片方をわざと無髄歯にしてその予後を有髄歯と比較しながら観察していくことになります。
当然倫理的に大問題なのでそういったデータはありません。
一方で「トラブルの起きた歯の中で無髄歯がどれくらいの割合だったか」ならデータはあるかも知れません。
私もそんなに色々知りませんが、知ってる範囲で・・
例えばレントゲンで根っこの先に膿がたまっている様に写る割合は無髄歯の中で3本に1本ぐらいと言われます。
(外国のデータです。日本だともう少し多いと思います)
これは大体根管治療の平均的な成功率(=60%ぐらい)に一致しますよね。
でもこれも平均ですから、ある人には6本中5本、ある人には10本中0本、なんてこともあります。
担当医の治療の質のせいじゃないかとか、そこまでは分かりませんけど。。
無髄歯特有の、一番起きやすいトラブルには間違いありません。
また根管治療がうまくいって、4年以内にレントゲンに問題が出なければおそらくずっと大丈夫だと言われています。
これは一番重要なのですが、お手入れでどうにかなることではありませんから、まずは良い根管治療を受けられる様”努力”して下さい。(田尾先生>検索システム早くお願いしますよー)
あとは2次カリエスの問題、これは無髄歯に特有ではありませんが、ひいては寿命につながる問題ではあります。
抜歯の理由の約4割?
歯医者が成人の患者さんの歯を削る場合の約7割が2次カリエスと言われます。
これには元々虫歯が多いタイプかそうでないかが一番相関します。
お手入れの問題(間食、歯磨き、フッ素、定期検診)、詰め物・被せ物の素材、精度、境目の位置(境目が根っこまできている場合、下の奥歯>上の小臼歯>上の前歯の順で特に危険です)が重要だと考えられます。
これはゆうさんにも頑張れるところがありますよ。
あと無髄歯に限りませんが歯周病の問題。これも抜歯理由の約4割ぐらいと言われます。
無髄歯だから進行しやすいとかそういうことはありませんが、被せ物の精度がいい加減だと境目にプラークがたまり、歯石があるのと同じ役割を果たしてしまって悪化しやすいです。
あとは他の先生方もおっしゃる”破折”の問題。
これはほとんどが無髄歯に起きます。
抜歯理由の多分10〜20%ぐらいだと思います。
何度か話題にしていますが、健康な歯が高さ2mm以上、厚み1mm以上ぐるっと一周残っていれば(=フェルールと言います)コアの素材に関係なく、かなり確率は低くなります。
研究によってや、最新の材料を使うことによっては高さが1.5〜1.0mmでもいいかも知れないとは言われており、高さは不揃いよりも均一な方がいい様です。
5年で最大5%程度(歯根破折の可能性)の違いだと思いますが。
これは、以前にもタイヨウ先生が言われている通り、コアの素材を変えることで抜歯になる割れ方(たて割れ)かやり直しのきく割れ方(横割れ)かは選択できるかも知れません。
参考⇒前歯のセラミック治療とファイバーコアについて
昔、無髄歯は歯質の硬さ自体が弱くなると言われていましたが、実際には差はない、というのが今の解釈の様です。
弱くなった歯に、硬いコア(メタルなど)を入れることで”補強”が出来ると盲目的に信じられてきましたが、現在は否定されています。
かえって歯を割る”くさび”になることが指摘されています。
ですから、フェルールが残せるか否かが今一番重要な分かれ道(=厚いほど良い)になるため、根管治療のやり直しが少ないほど安全だという話につながります。
ただ、物を噛んだ時の感覚が有髄歯の倍ぐらい鈍くなるため、思ってもいない硬いものを噛んでしまう、という可能性があります。
その結果割れることもあると思います。
割れやすい歯はおそらく、上の1,2番、上下の4,5,6番、メタルインレーの入っている歯、割れやすい人は過去に割った歯がある人、エラの張ってる人、男性、歯軋りや食いしばりの自覚のある人、奥歯、もしくは前歯のかみ合わせのなくなっている人、出っ歯の人、上下の前歯があたらない人・・といったところかと思います。
ゆうさんの今回治療した歯はどんなだったでしょうか?
・歯磨きの回数と歯の寿命について
”歯の寿命”は抜歯につながるか否かですから、虫歯(2次カリエス)か歯周病、破折が理由のほとんどになります。
このうち、歯磨きで可能性を低く出来るのは虫歯と歯周病ですね。
(破折も元をただせば虫歯のことがほとんどですが・・)
なくなる歯は大体下奥歯≧上奥歯>上前歯の順です。
(歯磨きの重点ポイントの順とも言えます)
一日2回磨くよりも3回磨いた方が虫歯や歯周病が少なくなるというデータは見たことがありません。多分大差はないと思いますよ。
これは研究データの解釈に注意が必要なのですが、大体、「一日1回かそれ以下」の人と「2回以上」で比較すると3年で20-30%の虫歯発生率の違いはある様です。
また、プラークの成熟(悪さをするのに十分になるまでの成長?)には、虫歯に対しては約2日、歯周病(の、ごく初期)に大しては約1日と言われます。
ですから、もしも”100%綺麗に磨けるのなら”一日一回で十分かも知れないですが、100%綺麗なはずはないのでせめて2回以上、というのが妥当だと思います。
虫歯リスクについても考慮しないといけませんよ。
フロスの使用に関しても、それによって虫歯が減るかはデータを知りません。
おそらく、フロスによってしか汚れの落ちない、歯と歯の接触面の虫歯が出来やすい10代〜20代ぐらいまではやった方が良さそうです。
ただし、フッ素やフッ素入り歯磨き粉を使用した後には使わない様注意して下さい。
(フッ素を取り除いてしまう危険があるため)
歯と歯と歯ぐきの間に隙間がひらいてきたら、虫歯・歯周病予防の為にはフロスよりも歯間ブラシが有効です。
因みに、歯磨きは寝る前にするのが一番有効(唾液量の問題、フッ素濃度の維持のため)なのですが、食事の前がいいか後がいいかは両方説があります。
差がないのなら食後の方が良さそうですが。。
食後もすぐがいいのかあえて少し待ってからがいいのか、それもまた良し悪しだったりします。
あと何分磨けばいいのかという質問もありますが、それも人それぞれです。
何年も検診をしていって、虫歯や歯周病がほとんどなかった人たちを集めると、大体プラークコントロールレコード(赤く染め出して、染まった箇所の割合を出す検査記録方法)が20%以下の場合がほとんどですから、ご自分がそれぐらいプラークを落とせる時間が「最低限必要な時間」ということになります。
歯周病予防には歯磨きしかないぐらいですが。虫歯予防にはフッ素をきちんと利用して下さいね。
参考⇒デンタルリンスや、乳酸菌入り(LS21)タブレットの効果は?
参考⇒虫歯予防に対するフッ素の効果的な使用法とは?
というわけで、何年とはなかなか言えないのですが、上の内容がひいては歯の寿命につながります。
神経を抜いたり詰め物・被せ物をしても一生持つ歯はたくさんあります。
できるだけ良い歯医者、良い治療を選んで、あとはセルフケアと定期検診を、是非とも頑張って下さい。
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