私も、東京の先生で被せ物まで・・というのに1票です。
ではまずラバーダムについて回答をしていきます。
国内の歯科の現状を考えれば、ラバーダムは治療の途中からでも、してもらえるならしてもらう方がベターです。是非してもらって下さい。
ですが、このHP中に出てくる「初回治療」という表現は、神経を抜くところから詰め物をするまでの一連の治療を指しており、「初回治療」でない治療は、「再治療」、つまり「昔に神経を抜いて治療をしたのにまた膿がたまったり痛みが出てきてやり直しが必要になった場合の治療」のことです。これが極端に成功率が落ちるのです・・・。
ただタイヨウ先生の、術者としての姿勢には反対です。患者さんの立場だと混乱を招きますので前回は大分オブラートに包んだのですが(参考⇒根っこの治療(根管治療)に高周波治療は有効?)今回は言ってしまいます。
「唾液の混入を防ぐ」のが最大の目的で、最終的な段階で使えば問題は無いという表現は半分不正解。後半部分に関しては完全にアウトだと私は考えています。
以前も書きましたが、唾液がかからない様に出来ればいいや程度のラバーダムの使用では不十分だと思います。
神経を抜くことになる場合(=「初回治療」)、大抵の場合は深い虫歯が原因になるのですが、その後「再治療」が必要になった歯から検出される菌は、いわゆる虫歯菌ではなく、もともと歯周ポケットに生息する菌だということですから、根管治療の失敗は、「消毒が不十分だった」と考えるよりも「余計なものを混ぜてしまった」と考えるのが素直だと思います。
また「虫歯が深くて歯が痛い!」段階では神経の中から菌はほとんど検出されないという事実もこれを裏付けており、だからこそ「初回治療」は成功率が高いことも納得できます。
それから、術後痛みが出てくる歯の中からは、細菌の種類が多いことが多い、というのも術中の無菌的操作の重要性を示唆します。
つまり、トイレの標語ではありませんが、「来た時よりも美しく」が術者の最低限の姿勢。後に密閉してしまうと分かっている歯の中の治療中に、400〜500種類とも言われる菌の含まれている唾液はもちろん、例えばラバーダムのかかっている歯の表面に残っているプラーク(=バイオフィルム;菌の塊)を除去しないとか、歯とラバーダムとの間にわずかでも隙間があいている(=歯周ポケットが覗いている)ぐらいの状態でのラバーダムの使用は、根管治療の最初から最後まで、思いっきり避けるべきだと思います。
ちょっと私ごときが偉そうになってしまって恐縮なのですが、有名なことばを借りて、「(患者に)何よりも害を与えてはいけない」”First do no harm.” (医学の父『ヒポクラテスの誓い』ですが・・ほんとは原文にこんなフレーズないそうですけどね)です。
治療の成功率がわずかに変わるかどうか、の話ですから、治療を受ける患者さんにとっては、あまり気にする必要はないと思いますけどね。
では「1ヶ月以内に治療した方がよいとも聞きました・・」の点について回答いたします。
「1ヶ月以内に・・」というのは田尾先生がこのサイトで使われている表現ですが、おそらく治療期間中に使用する仮のフタの信頼性の問題からそう表現していると思います。
せっかくラバーダムまでしてもらって消毒をしてもらったとしても、仮のフタがいい加減だと唾液などの混入が考えられ、上述の通り台無しですからね。
仮のフタにも色々種類があるので分かりませんが、しっかりしたフタであって、消毒も上手く行っているのであれば、実は何年でも問題はありません。(もしも消毒が上手くいってなくて、中に入れてある薬が揮発性の臭い薬だったら、数日で薬効がなくなり、残った菌が増殖する危険はあります)
仮のフタの悪いやつ代表に、治療の最後に、熱で軟らかくしてブチュッと押し込む「ストッピング」と言われるフタがあります。色は白が多いですがピンクっぽいのもあります。
「ストッピング」とは名ばかりで、ほとんど「ノンストッピング」。他のものと組み合わせて、中だけに使うとかならOKなのですが、これ単体でフタをされていると半数以上で細菌の漏れが検出されるという報告を聞いたことがあり、私ならちょっと不安です。
短期間なら唾液で徐々に固まる「水硬性セメント」(商品名;キャビトン、ルミコンなど これも白っぽい色です)というものでも大抵大丈夫そうですが、長期間置いておく場合は、totoさん自身が針などで慎重に突いてみて、全然刺さらないぐらい硬いもの(粉と液を練って作って口の中ではすぐ固まる“セメント”というのを使うのが一般的です)なら数ヶ月ぐらいは全然安心です。
逆に期間の早すぎる根管治療にも利点・欠点があります。
「初回治療」や「念のための再治療」の場合は、早い方が新たな感染のリスクを下げることが出来るかも知れないのでメリットありですが、特に痛みやウミがたまった後の「再治療」の場合は、消毒液をつけていても、2週間ぐらいは仮死状態で、薬が効かない種類の細菌なんかもいるのだそうです。
薬の交換という作業自体も、思わぬ感染をまた引き起こしてしまう危険を伴うのですが、早さや遅さ、回数だけではくくれない問題が色々とあります。
最後に東京と四国の問題ですが、良い先生に当たれば田舎でも関係ありませんよ。四国にも、根管治療で私が尊敬する先生はいらっしゃいます(今は海外留学されてるかも知れませんけど)
ですが、保険だと、誠実にやればやるほど赤字の根管治療を、せっかく真面目にやって下さった先生に、一番“利益”(←こういう言い方嫌ですけど)の出る被せ物だけ違うところで。。というのは、この厳しい業界で、ちょっと酷かな・・という気がしてしまうのです。(小さい人間でごめんなさいっ)
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