はじめまして。
根管治療についての細かいご質問ですので、順番に分かる範囲でお答えしていきます。
担当される先生によって考え方が随分異なるかも知れませんので、参考までに。。
・いわゆる「根管治療で失敗したケース」でしょうか?
やや専門的になりますが、「”いわゆる”根管治療の失敗」とは、
1)自覚症状がある
2)レントゲン写真で(根っこの先端に)歯根膜腔の拡大を認める
の2つを指すと思います。
誰が言えば”いわゆる”に含むかが問題なのですが、国際的な学会誌などではこんな感じに表現してる気がします。
でNOさんの場合、1)については触れば違和感がある訳ですから、微妙なところですが失敗とも言えるかな、と。ですから他の先生方も今回は歯切れが悪いのですね。
2)についてはどうでしょうか?
歯根膜腔とはレントゲンで歯の根っこの周りにふちどりの様に写る黒い線です。(歯と支える顎の骨の間にある隙間みたいなところです)
これを下の方から順にたどって見て行って、根っこの先端のふちどりが、他よりも2倍以上(2mm<ぐらい)に拡がっている、あるいは根っこの先端のあたりだけが全体的にもやもやと黒っぽい場合が、症状の有無には関係なく、”いわゆる失敗”になります。
ただ、パノラマ撮影(※頭の回りをぐるっと回って撮影する撮影方法)では、前歯のあたりは不鮮明に写ることが多く、歯根膜腔がはっきり見えず、診断に向かない場合があります。
治療開始に悩んでしまう場合には、デンタル撮影(※口の中に直接フィルムを入れて撮影する方法)も見て参考にするのがいいと思いますよ。
参考⇒ラバーウェッジや虫歯の判定や手袋の着用について
ですから診断の参考になるのが、鼻の下あたり(=根っこの先端あたり)を触ったときの違和感だけですから、“微妙”なんです。。
幸いかぶせ物を取ったりする必要がない様なので、担当の先生が信頼できそうな歯医者さんであれば、その点に関してはお任せする・・・というのが良いかなぁと、私も思いますよ。
ところで「白く細長い糸のような管がヒョロヒョロと薄くぼやけて写って・・」というのが診断基準にならないか疑問が残るかと思うのですが。
「これでは歯の中はバクテリアだらけだ」とは本当は言い切れません。(担当の先生はレントゲンや自覚症状なども勘案してそう表現したのだと思いますが)
確かにヒョロヒョロ・・よりは緊密に・・はっきりしっかり写る様な薬の詰め方が努力目標ではあるのですが、=失敗とは言えないんですね。
昔・・たぶん70年代ぐらいだと思いますが、その頃は「根管治療の成功=薬が根っこの先端あたりまではっきりしっかり」と考える人たちが多かったのは事実です。
ですが、それはベターではありますが、十分ではありません。
「根管治療の失敗=(身体が許容できない程の量の)バクテリアの残存」であって、その結果生じることのひとつが「自覚症状」や「歯根膜腔の拡大(=膿の蓄積)」なんですね。
体調によって症状が出たり引いたりするのは、残っているバクテリアと身体の抵抗力のせめぎあいの結果なのです。
確かに根管の中に薬がぼそぼそにしか入っていない状態(ヒョロヒョロに見える状態)だと、隙間が多いので、そこでバクテリアが繁殖してしまう危険は高いでしょうが。
・治療によって痛くなってしまう可能性もあるならば、当面は様子見も考えられますか?というご質問については、
治療期間中に、一時的に痛くなる可能性はあります。バクテリアを増やしたり元気にしたりする可能性が少ないながらもありますので。
ですが、最終的にバクテリアを、少なくとも今よりは減らして貰えそうで、一方治療のための犠牲が少ない(かぶせ物を外したりしない)のなら、念のために治療することは、悪くないと思いますよ。
・マイクロスコープ・ラバーダムを備えた歯科医院で治療した方が良いでしょうか?
そりゃないよりはあった方がいいですよ。
(参考⇒根管治療の専門医を探すには?)
ただ効果としては、成功率で数十パーセントあるかどうかの差ですから、今それに対しての費用や手間をどう感じられるかですよね。
タイヨウ先生のおっしゃる通り、一般的に難易度の高い歯ではないです。
因みに歯根膜腔の拡大がすでに見られるなら、もしもそれが育って大きくなれば成功率は下がってしまいますよ。
今回治療しないなら、せめて時々レントゲンを撮って、変化は見ていく必要がありますね。
ラバーダムについては、根管治療が、レントゲンに写る白いお薬を“はっきりしっかりさせること”が目的ではなく、“バクテリアの除去”が本当の目的だと理解された上で、もう一度「根管治療の途中からラバーダムをするのでは遅いですか?」を読んでいただくと味わいが出てくると思いますよ。
担当の先生とも良く相談して、決めてくださいね。
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