日本の保険制度の中での根管治療って少し独特ですから、良い悪いを別として欧米の専門医の間での根管洗浄(殺菌?というか専門的には"消毒"と呼びます)について少し書いて置きます。
ゴールデンスタンダードは藤森先生が書かれた様に次亜塩素酸ナトリウムです。
大体これを主役として、濃度や量、時間、補助的に他の薬剤(EDTA、クロルヘキシジン、ヨード等)も使用したり、温度を変えたり浸透しやすくするために超音波振動を加える等の工夫をしています。
抜髄処置の場合は基本的に無菌の状態の根管を触っているので理屈の上ではかなりあっさり目で良いのですが、感染根管の場合は酷く汚染された状態からの消毒になりますので、上述した様な部分で多少の変更を加える先生も少なくないと思います。
(例;抜髄なら0.5%の次亜塩素酸ナトリウムを、感染根管の際には5%も併用する、等)
ですから抜髄処置なら1回の洗浄(つまり神経を抜いた日に根管充填)でも可と考えられますので、処置は1〜2回で済ませることが多いと思いますが、感染根管治療の場合は洗浄のみではなく水酸化カルシウム製剤でも時間をかけて細菌数を減らす努力をする考え方が主流だと思われます。
感染根管の場合最大2週間程度仮死状態を維持して、薬が効かなくなる菌も見られることがあると言われているために、おそらく短くても2週間以上、通院としては2〜3回以上はかける方が多いと思います。
(1回で終わらせることが多いという学派もあるそうですが)
興味深い研究データとして、例えば次亜塩素酸ナトリウムの様な薬剤を使用せずに、研究の対照群に生理食塩水を用いた方法でも、根管内の細菌数は減っています。
ですから綺麗な液体であれば何でも、時間をかけることでそれなりに細菌数を減らすことができそうです。
それと根管内の太さがある程度ないと先の方までは薬液が届かないということも知られています。
ですので根管拡大というのはどうしても必要です。
あと海外の話ではありますが学生がおこなった消毒なんかも案外良い結果が出ていたりします。
これはおそらく、"時間"という要素が意外に大切で効果的ということを示唆しています。(根管内洗浄に1時間以上とかが普通にかかる状態で、当然ながらラバーダムも使用しています)
保険治療の根管治療は結果が悪い傾向があるのですが、決定的に不足しているのは、薬剤ではなくて「時間」(を、かけられるだけの診療報酬?)かな、と個人的には感じます。
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