「器械的操作」や「大量の水でジャブジャブ」でも確かに細菌数は減りますし、ラバーダムを使わなくても上手くいくこともあると思います。
色々な考え方、価値観の先生がおられるのも事実です。
ただ患者さんにとっては一本しかない大切な歯ですから、より確実性の高い方法を希望されるのはもっともですよね。
1985年の研究では、器械的操作(手用ファイルを使った根管拡大)+化学的洗浄(次亜塩素酸ナトリウムを使用)を1回(1日)行っただけだとまだ約半数の根管で細菌が検出され、その後貼薬(水酸化カルシウム)を4週間以上行ったら97%の根管で細菌が検出されなくなったとされています。
2000年に別の研究グループが行った、↑の手用ファイルをNiTiファイルに替えた類似の報告では、器械的操作(Ni-Tiロータリーファイル使用)+化学的洗浄(次亜塩素酸ナトリウム)1回で61.9%の根管で細菌が未検出になり、またそれは生理食塩水のみで洗浄した場合よりも明らかに効果的で、貼薬(水酸化カルシウム)を1週間以上行ったところ92.5%の根管で細菌が検出されなくなった。とされています。
文献はコチラ
J Endod. 2000 Dec;26(12):751-5.
Reduction of intracanal bacteria using nickel-titanium rotary instrumentation and various medications.
Shuping GB, Orstavik D, Sigurdsson A, Trope M.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11471648
また根管貼薬を行わないと、せっかく洗浄で一時的に細菌数が減ったとしても次回来院時には細菌数が増えている、という報告もあります。
この研究は一見無菌化が簡単そうな単根歯で行われていますが、
器械的操作+生理食塩水で洗浄+仮封
を5回繰り返したところ、平均値でいくと細菌数は初日の終了時(洗浄直後)よりも5日目の治療開始時の方が細菌数が二桁も多いという結果です。
文献はコチラ
Scand J Dent Res. 1981 Aug;89(4):321-8.
Bacteriologic evaluation of the efficacy of mechanical root canal instrumentation in endodontic therapy.
Byström A, Sundqvist G.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=1981%20Bystrom
「治療結果に差異がない」というのはその先生が「経験的」にそんな「印象」を持っている、というだけの話で、臨床家が自分の治療結果を正確に記録して比較評価しているというのは0.1%もいないのが現実だと思います。
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