こんばんは。
まず、一般的な「失敗の定義」ですが
処置後4年経過時に
・レントゲン上で根尖病変が確認出来る もしくは
・自覚症状が発現している
ものを、臨床研究においては「失敗」とすることが多い様です。
参考⇒根管治療の「成功」と「失敗」は、いつ分かる?
つまり、例えば「自覚症状がなければ成功」と言う基準にするなら、成功率が相当に跳ね上がりますし、あるいは4年後までにいなくなってしまった患者さんを数えない場合も、成功率は大きく変わります。
(予後の悪い方の方が転院率は高いはずなので)
処置後数ヶ月以内に痛みを訴えられる様なことが滅多にないから成功している、みたいに数え出すと数値は全く異なってきます。
成功率についての研究は過去いくつもありますから、大体の数値ははっきりしていますね。
このサイトの根管治療の解説ページでも書かれている通りです。
成功率を考える時には、
【専門医が行う治療】
【日本の保険治療】
あるいは
・抜髄(初めて神経を抜く治療)
・感染根管治療(抜髄が失敗した場合に行う治療)
を区別する必要があります。
(本当は歯の種類やら治療前の病変の大きさ、根管充填の質、インレー等の修復物の質など色々あるのですが、その辺は割愛します・・)
【専門医が行う治療】
であれば、
抜髄・・90%前後
感染根管治療・・60%前後
ぐらいが、おおよそコンセンサスの得られている数字かと考えられます。
(※感染根管治療については、近年日本のあるグループで、入念にデザインされた研究で約80%という成功率も報告されています)
【日本の保険治療】
については、実際のところ信頼出来るデータがありません。
保険治療と似た内容で行われた海外の大昔の研究報告や、国内の報告から推測するに、正確とは言えませんがおおよそ
抜髄・・50%前後??
感染根管治療・・30%前後??
あたりがおそらくは妥当な数字かと私も思っています。
どちらかと言うと抜髄の成功率に関してはまあまあ信用出来そうなのですが、感染根管治療については海外と事情が異なりすぎるために、やや想像の域を出てないかも知れません。
この辺りは過去にも詳しく書いていますから、良かったらご覧になってみて下さいね。
(昔の回答なので少し遠まわしに書いてます^^;)
参考⇒ラバーダムは理想論!?(根管治療の成功率)
ここから下は私個人の臨床実感ですが、来院される患者さんのCT像を観察していると、無髄歯(神経をぬいてある歯)の約半数に明らかな根尖病変が認められます。
(※CTの画像は鮮明すぎ、これで診断して良いのかどうかは議論の余地もありますので、小さい病変については除外しています。因みに上のリンク先で引用している日本の報告では、8割近くで病変を確認したとのこと)
抜髄歯、感染根管治療歯、再根管治療歯、病変が治癒途中の歯など混ざっていますからここから正確な数値を想像することはもちろん出来ないのですが、大雑把に考えれば
保険の一般的な抜髄 ⇒ 半数ぐらいが失敗
保険の一般的な感染根管治療 ⇒ 大体失敗
と考えると辻褄が合う様に感じます。
ちょっとゾッとしますけど。。
それと数字はあくまで数字ですから、実際にはもっとずっと上手な先生、上手でない先生、色々ですから、数字は参考程度にして下さいね。
前置きが長くなってしまいましたが、
>1.こちらの書き込みを見ると再根管治療でももう少し希望の持てる成功率のようなのですが・・・
>実際はどうなのでしょうか。
個人的には一般的な保険治療の話だとしたら「30%」には違和感はありません。
ラバーダム、マイクロスコープを使って無菌的な処置に十分配慮して、何時間もかけて行う「専門医的」処置内容の話だとすれば低すぎる数字の様な気がしますね。
>2.それほど低い成功率なのであれば、何度も失敗して歯が薄くなる前に、初めから意図的再植をお願いしてみたほうが良いのでしょうか。
これは考え方が色々出来ますが、いきなり意図的再植というのは田中先生のおっしゃる通り、ナシかな、と思いますよ。
少なくとも言えるのは、抜かなくて良い神経なら抜かない方がいいですし、止む無く抜く場合、止む無く再治療を行う場合は出来る限り最善の治療を受けられた方が良いと思います。
根管治療はダイレクトに将来の「抜歯」に繋がる話ですから、見た目がいいだけの白いクラウンなんかよりも、頑張らなくてはいけない部分だと思います。
お大事にして下さい。
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