岐阜市の歯科医院/歯医者 ノアデンタルクリニック

ノアデンタルクリニック・ホワイトエッセンス

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ビスホスホネート製剤による治療中の根管治療実施の有無について
三保の松原 さん 女性  39歳
2008-08-20 23:01:47
2008年2月より月に1回、ビスホスホネート製剤による治療を受けています。
(乳がんの骨転移の治療の為。製品名ゾメタ)

この状態で根管治療を受けることについて、ご意見を頂ければ幸いです。


2回目の投与の後、右下6番目の内側の歯茎が「ぼこっ」と丸く腫れた為、急遽かかりつけの歯科医院で、膿を出してもらいました。
(レーザで穴を開けて、そこから出した模様。)

その後も、初回ほどの大きな腫れは見られないものの、多少の腫れが繰り返され、またレントゲンを見ると、神経が痛んでいるようにも見えるので、一度インレーをとって中を洗ったほうがいいのではないかと言われてます。
(根管治療の事かと思われます。)


とはいっても、ビスホスホネートを使用しているので、お互いに慎重になっており、情報収集中です。
ご意見いただければ幸いです。

ちなみに、乳腺外科の主治医に、の治療の事を相談したところ、ビスホスホネートと歯科治療の関係は、まだはっきりした方針が出ていないようだが、もし、歯の治療を始めるのであれば、開始前最低1ヶ月は注射をやめよう、との事でした。

よろしくお願いいたします。
ノア デンタルクリニック・ホワイトエッセンス(岐阜市)の渡辺です。

こんにちは。
大変辛い状況ですね、お早い快復を願っています。

問題が問題なので自分なりに調べていたところに、ご専門の湯浅先生からのコメントが入りましたので書き込みませんでしたが、一応追加で情報を出しておきますね。

少しでもリスクのイメージを掴んでおかれた方が、心配ごとが減るかと思いますので、その辺りを中心に。



ビスホスホネート製剤(以下BP)による治療を受けられてる患者さんの対応については、担当の先生や湯浅先生が仰る様に、まだ手探りの様な部分がありますので、その辺りはご容赦下さい。

現時点での最新情報、またその信憑性という意味でも、私の様な歯科医と言え専門外、歯科雑誌などを読んで情報を得ている様な立場の人間よりも、湯浅先生(口腔外科がご専門、しかも原著を調べて歯科雑誌にも投稿される様な立場の先生)のお話の方がより正確です。
(※と言っても、湯浅先生もビスホスホネートの調査や研究までされてる訳ではありませんから、”より正確”と言う意味ですよ)


と言う感じで、2008年7月の歯科雑誌、「デンタルダイヤモンド」(デンタルダイヤモンド社)から、一般患者さん向けに内容をかいつまんで記載しておきます。
(※一般の方でも購入可能です※)



(渡辺の解説; 大前提として、BP投与中の患者様の歯科処置が慎重にならざるを得ないのは、抜歯手術などを行った時に、顎の骨が壊死する病気(顎骨壊死)に繋がるリスクがあるためで、以下は全てそれに関する話です。)


●BP投与患者の顎骨壊死発生頻度について

正確な数値はまだ分かっていませんが、一般的にはBPの経口投与(飲み薬、主に骨粗鬆症)患者よりも、静脈内投与(注射薬、主に悪性腫瘍)患者の方がリスクが高いです。

豪州の調べでは、

BP投与全体での顎骨壊死発生率→0.05〜0.1%
経口薬(骨粗鬆症)→0.01〜0.04%
注射薬(悪性腫瘍)→0.88〜1.15%

BP投与患者に抜歯を行った場合の顎骨壊死発生頻度→0.37〜0.8%
病名別では、
骨粗鬆症患者→0.09〜0.34%
悪性腫瘍患者→6.67〜9.1%
(ビスホスホネート系薬剤製造販売関連企業編資料:ビスホスホネート系薬剤と顎骨壊死, 2008より)


(渡辺の解説; 当初噂になっていた情報よりも数値が大分低い気がします。
万が一のことを考えれば危険は危険ですが、可能性は、思っていたよりは低い印象を受けました。

三保の松原さんの状況をこれに当てはめて考えるとすると、BP投与患者の中では最もハイリスクではありますが、中でも最も危険と思われる抜歯手術をした場合で、顎骨壊死の可能性は最大でも9.1% ということになります)



●顎骨壊死発生に関わる歯科処置は、
×抜歯
×インプラント埋入(渡辺注;※インプラント
×根尖外科処置(※歯根端切除術などのこと)
×歯槽骨への侵襲を伴う歯周外科処置(※歯周外科治療
など

歯内療法(※根管治療
○充填処置(※レジン充填など)
歯肉縁スケーリング(※スケーリング
ブラッシング などは問題なし

と言われています。
Gutta R, Louis PJ.
Bisphosphonates and osteonecrosis of the jaws: science and rationale.
Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2007 Aug;104(2):186-93. Epub 2007 Apr 20. Review.

文献はこちら→
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17448709?ordinalpos=2&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum


(渡辺の解説; 簡単に言うと骨を直接触る様な処置がダメと言うことです。ですので、今懸念されている根管治療は大丈夫で、前回にされたレーザーで歯肉に穴を開ける様な処置の方が、むしろ危険と考えられそうです。

ただし、担当の先生もBPのことはご存じでその処置をされてる訳ですから、レーザーを使用されたと言っても骨面を触るほどの処置ではなく、歯肉を少し切った程度だったのだろうと思いますので心配なく。

それと湯浅先生が書かれている通り、いくら大丈夫とは言っても100%大丈夫かと言えばそれは言い切る事は出来ません、、と言うことです)



●ただし、入れ歯でも顎骨への圧迫や義歯性潰瘍などが骨に何らかの影響を及ぼし、顎骨壊死発生に関与?と言う見解もあるので注意

Magopoulos C, Karakinaris G, Telioudis Z, Vahtsevanos K, Dimitrakopoulos I, Antoniadis K, Delaroudis S.
Osteonecrosis of the jaws due to bisphosphonate use. A review of 60 cases and treatment proposals.
Am J Otolaryngol. 2007 May-Jun;28(3):158-63.

文献はこちら→
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17499130?ordinalpos=4&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum


一方、全てが歯科処置と関連する訳ではなく、自然発生的に顎骨壊死が起きることもあります。

(渡辺の解説; そういうものも全てひっくるめて、豪州の調べでは、BP投与全体での顎骨壊死発生率→0.05〜0.1%、と言うことですので、けして高い数字ではないと思います。)



●米国口腔外科学会の病気分類に準じた治療方針

図で下方に添付します。
(ビスホスホネート系薬剤製造販売関連企業編資料:ビスホスホネート系薬剤と顎骨壊死, 2008より)

(渡辺の解説; 三保の松原さんはまだ顎骨壊死を起こしてませんから、一番上の、「潜在リスク患者」に含まれます。

私の様な専門知識の少ない一般歯科医は、万が一BPの副作用で顎骨壊死を起こしてしまったら、イコール顎骨の切除&再建術??・・と言う非常に怖いイメージを持ってしまいがちですが、そうではなくて段階的に対症療法があると言うことです。

ただし、私も初めて知ったのですが、湯浅先生のご回答によると骨の露出がない症例もあるとのことで、そういったことも含めてこういった治療指針は、今後も逐次変更されていくものと思われます。)



●顎骨壊死を起こしやすくする危険因子

?コルチコステロイド療法
?糖尿病
?喫煙
?飲酒
?口腔衛生不良
?化学療法薬
?高齢者(65歳以上) など

American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons position paper on bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaws.
J Oral Maxillofac Surg. 2007 Mar;65(3):369-76.

(渡辺の解説; とは言われている様ですが、詳細はまだ不明です。
歯科医が関わる領域としては?についてで、口の中の細菌の除去については、骨面を触らない範囲でむしろ積極的に行っていくべきだと思われます。
具体的にはブラッシング指導、食事の取り方についての指導、歯石取り、あるいは虫歯や今回の様な感染根管はともに細菌感染症です。

特に感染根管治療については骨面に近いこともありますから、湯浅先生の仰る通り、できれば早めにきちんと処置していくべきかと思われます。

その際、万全の治療を考えるなら、細菌感染の拡大予防の目的で、念のための抗菌剤の併用と、高い技術を持った歯内療法専門医の治療がより望ましいとは思います。

ですが専門医の治療は10万円〜の高額になることも考えられますので、総合的に判断されるのが良いかと思いますよ。)



●今後もしも抜歯などの危険な処置が必要になった場合

◎BPが経口投与の場合(※参考までに)

米国歯科学会によると

「経口BP投与期間が3年未満で、コルチコステロイドを併用している場合、あるいは経口BP投与期間が3年以上の場合には、BPを処方した医師に問い合わせる。 BPの投与中止が可能であれば、抜歯などの処置の少なくとも3ヶ月前にBP投与を中止する。 BPの投与再開は処置部位の骨の治癒傾向が認められるまでするべきではない。」

とされています。

またコルチコステロイド以外の危険因子(※上記?〜?)についても、同じ様に扱うべきという意見もあります。
(ビスホスホネート系薬剤製造販売関連企業編資料:ビスホスホネート系薬剤と顎骨壊死, 2008より)

また、3年という基準の設定の根拠などは不明です。


◎BPが静脈内投与の場合(※三保の松原さんの場合はこちら)

メインとなる疾患の治療が重要であるため、休薬は困難なことが多い。
各主治医、患者さん本人との話し合いの上、どうしても必要な場合に限り、リスク承知で抜歯するしかない??

(渡辺の解説; 三保の松原さんの場合には、万が一にも今後抜歯が必要な事態に陥らない様、歯科的管理が必要かと思われます。
に何か問題を抱えていると感じる場合は、積極的に歯科医と相談して、問題解決に向け働きかけた方が良いかと思われますよ。)




・・と、言うことです。
(内容に問題があれば湯浅先生、フォローをお願いします)

ご家族、ご友人ともども心配は尽きないかと思いますが、皆様どうぞお大事になさって下さい。


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2008-08-10 12:58:54

この相談の詳細情報
このページは歯チャンネル提供のリンク機能を使用して、原文より一部抜粋したものです。
全ての質問文と回答を見る際は、原文をお読みください。
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