岐阜市の歯科医院/歯医者 ノアデンタルクリニック

ノアデンタルクリニック・ホワイトエッセンス

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NaOClによる根管の化学的洗浄、作用時間と濃度について
主婦A さん 女性  37歳
2008-05-10 00:26:32
先生方、こんにちは。
現在、根管の化学的洗浄について調べています。

NaClOの濃度の違いによる殺菌効果の差について、以前渡辺先生が紹介されていた文献(Bystrom & Sundqvist 1985)では、0.5%と5%で比較して有意差がないということですが、それでは作用時間はどうなんだろうということが気になりました。

根管内のバクテリアに対して十分な殺菌効果が得られる作用時間(および濃度)というのは、どのぐらいが目安なのでしょうか。

ことに気になるのは、Enterococcus faecalis のようにアルカリに対して強い耐性を示して除去しづらく、水酸化カルシウムにも抵抗を示す菌に対して有効な作用時間(および濃度)がどれくらいなのかということです。

(まったくの無菌化は不可能であること、現実の治療では制約があり出来ないこともあるということは十分に承知しています。しかし、それはさておいて研究結果ではどうか、また権威者の意見はどうなのかといったことを、ひとまず知っておきたいのです。根管充填を目前として‥)


多忙な先生方に出来るだけ頼るまいと、このところずっと自分なりに出来る範囲で文献検索していたのですが、うまく情報を見つけ出せず質問させて頂く次第です。

面倒な質問で申し訳ありませんが、もしもご回答くださる先生がいらっしゃれば大変うれしく思います。

よろしくお願いします。
ノア デンタルクリニック・ホワイトエッセンス(岐阜市)の渡辺です。

こんにちは。
またマニアックな・・・

作用時間のことを知ってどうするんです?
「1秒、2秒、3秒・・・・・・・1秒足りな〜いT_T」
とかやるのは勘弁して下さいよね^^;



えーと、NaOCl(と、書くことが多いと思いますが・・次亜塩素酸ですね)の作用時間についてですけど、細菌に触れると効力を失いますから、時間は関係ありません。残念!(笑)

でも、おそらく短いよりは長い方が良いとは思います。

実際、アメリカの歯学部の学生が、2時間ぐらいかけてトロトロと根管治療をすると、やたらと成功率が良いみたいですよ。

ただ基本的には量の方が重要です。
感染している部分に対して、新鮮なNaOClを供給し続ける必要があります。

どれだけ使えば良いのかと言うと、「じゃぶじゃぶ使う」「水の様に使う」・・とまあ、そんな感じみたいです。。

研究論文とか見ると、10ccとか使っていることが多かった気がしますが、研究論文で使う量=必要な量ではなくて、研究論文で使う量=これだけ使えば量による結果のバラツキは出ないだろう=足りないことはないだろう量です。と思います。たぶん。

でも実際、専門医の先生方はそれぐらい使っている様な感じですね。

現在は超音波洗浄なども併用するので、たぶんそこまではいらないだろうと言う話もありますし、10ccも使うとなると、かなり時間もかかります。

保険ではさすがに・・・的な状態です。



それから・・濃度についてですね。

前回も書きましたが、0.5%以上あれば、抗菌性には大差ありません。

組織溶解作用を考慮すると2.5%以上必要なので、水酸化カルシウム(※組織溶解作用あり)を使わない前提なら2.5%以上を使用した方が良さそうです。

ただ、細胞毒性も同時に上がるため、安全性にうるさいヨーロッパなんかでは、基本0.5%(たぶん)+水酸化カルシウム。

学生臨床実習の際などはクロルヘキシジン(※組織溶解作用なし)を使わせたりもするそうです。

そんな中、ラバーダムもせずに6%程度のNaOClを使用するのが当たり前の日本って・・火傷しそうです。

あ、それと、日本は何故かNaOClにオキシドールを併用して「交互洗浄」というのをする様に習うのですが、これはNaOClの作用を中和してしまうことと、多量に発泡するために気腫という病気?(すぐ治ります)を引き起こす可能性もあって、これも日本独特の様ですね。




次に・・バクテリアの話ですね。

いわゆる難治性の状態になっている場合、どういう訳か(※原因菌ではない)カンジタ菌やEnterococcus faecalisがよく検出される、という事になっています。

これらはどちらもアルカリに強い耐性を持っているので、だからこそ残存しているのと言えるのですが、水酸化カルシウム(※強アルカリ)を使うとも限らない日本でも同じ状態なのかどうかは分かりませんよ。

少なくとも、仮の蓋が緩んだ様な時にチーズを食べるのはやめましょうね^^

参考⇒根管治療の仮蓋 水硬性セメントを外す際、歯は削られるのでしょうか?



で、カンジタ菌については0.05%とかのNaOClやクロルヘキシジン、更にもっと低い濃度のヨードでも除去できるのですが、Enterococcus faecalisについてはNaOClもなかなか効きにくいです。

代わりに5〜10%程度のヨードで10〜20分間や、2.0%クロルヘキシジン、ドキシサイクリンなどが有効っぽいです。

ただし! ここテストに出ます(何の??)
NaoClとクロルヘキシジンは反応するとドロドロの沈殿物が出来ますので、ご注意を。



あと、MTADですね。

MTADは、私も最近、時々ですが使っていますよ。

ただリサーチがまだ多くなくて、Enterococcus faecalisへの有効性は、クロルヘキシジンよりも優っている〜劣っているのどの結果もある様です。

使用したい場合には、[Trabinejad](←作った先生の名前)で検索すると、ポジティブな結果ばかりが出て来るみたいです。

これは理屈が素敵で、成分は酸+ドキシサイクリン+界面活性剤です。


・酸→象牙細管(※中にも細菌がいます)の目詰まりを起こしているスメアー層(※象牙質の削りカス)を溶かして

・ドキシサイクリン→広範囲スペクトル抗生剤、もちろんEnterococcus faecalisにも効く!はず。を

・界面活性剤を併用してスムーズに流し込む


と言うモクロミです。(分かります??)

クロルヘキシジンみたいに、NaOClと反応して沈殿物が出来たりしないですし、パッケージもかっこいいので、おまじないにはなるかな、という感じで使用しています。



ただ、ですね。

洗浄をする前に感染歯質は可及的にファイリングで取り除かなくてはならないですし、見逃し根管、触れる訳のない側枝なども必ずあります。

薬液が十分に浸透するためにはそれなりの大きさにまで根管の大きさを拡大しなくてはならないのですが、大きすぎると歯根に穴が開いたりも。

最初から最後まで様々な技術が必要です。

AしてBしてCすれば成功すると言うものではありませんし、AもBもCもしてないのになんだか成功してしまうことも多々あります。

術者である私達は色々知って出来る努力はするべきでしょうが、患者さんに出来ることは、担当医の技術を信じることではないでしょうか。

・・みたいなまとめで(笑)

とにかくストップウォッチとか持って受診するのは止めて下さいね。

ではお大事に。
2008-04-14 23:21:03

この相談の詳細情報
このページは歯チャンネル提供のリンク機能を使用して、原文より一部抜粋したものです。
全ての質問文と回答を見る際は、原文をお読みください。
原文を見る NaOClによる根管の化学的洗浄、作用時間と濃度について
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