はじめまして。
2年目ですか。めちゃくちゃ大事な時期ですね。
自分は2年目に今でも師匠と思っている先生に出会えて、良い方向に(たぶん・・)向かわせて貰えたと思っています。
医龍でも、「お前は真っ白い医者のままでいろ」なんてかっこいいセリフがありましたが、夜中に診療のことを思い出して悩んでしまう、今の気持ちを忘れない様にして下さいね。
さて、根管治療については自分も3年目なので多くは語れませんが、また後で井野先生たちが良い示唆をしてくれると思います。
ちょっと思いつくことだけ書いて行きますね。
【根管の最狭窄部の位置の確認について】
出血を少なく済ませるには、というか理想的な根管治療を行うためには、「生体のバリヤー」と呼ばれる「最狭窄部」を壊さないことが重要です。
特に今回は抜髄ということですから、「手付かずのバリヤー」が残っているので、これを壊さないこと、不安ならアンダーで済ませるぐらいが良いと思います。
根管充填の成功率は、オーバーとX線的丁度、アンダーで比較するとアンダーが一番良いのは知っていますよね?
(1973 Bergenholtz, 1990 Ödesjöなどいろいろ)
で今回はX線で根管長を確認したとのことですが、
?X線的な根尖の位置
?根尖孔(major foramen)の位置
最狭窄部(apical constriction)の
?根尖側端(apical end)および
?歯冠側端(coronal end)
に実際はかなりズレがあって、個人差も大きいというイメージを持っておくことが役に立つと思います。
(The accuracy of electronic working length determination.
Int Endod J. 2004 Feb;37(2):125-31. Hoer D, Attin T.
こちらを読むと分かりやすいです。自分が卒後3年目ぐらいに読んだ論文です^^)
つまり、もし仮にX線上で根尖の長さぴったりまで拡大すると、すでに根尖口を突き抜けてオーバーになっていますし、人によっては4mm手前で最狭窄部(apical end)がすでに終わっている場合もあります。
ですから今回はどこまで拡大したのかわかりませんけど、一番出血の少なくなるはずの最狭窄部をすでに超えて拡大している可能性もなきにしもあらず。ということで、#35から#60まで、傷口を更に拡げていたかも知れません。
患者さんが若年者ですから、元々根尖が拡くて止血は時間がかかるかも知れませんね。
で、その場合どうするかと言うと、#60まで拡げるのではなく、仕方ないのでアンダーのまま水酸化カルシウムでも入れてきちんとしたもので封鎖して、終わってしまっても良かったと思います。
(良く言えば圧迫止血?)
生活歯髄切断法もあるぐらいなので、薬剤が疼痛の原因にはなりません。
(因みに疼痛の原因も内圧とは言えません)
で次回はまた一応浸麻をして、X線の長さ、EMRの長さ、手指感覚を頼りに作業長を再度決めれば良いと思います。
拡大は、#35か#40ぐらいまで拡げればNCなどの薬液が十分届く様になるので、それ以上続けるのは根管の破壊ですし、ファイルの弾性がとっくになくなって、もともと湾曲している根管を真っ直ぐにしているだけです。
ステンレススチールのファイルだと、根管の形態に沿うのは#25ぐらいまでだったか・・です。
後の歯根破折の原因にもなりますし、拡大は最小限に抑えるべきです。
仮に今回の患歯を抜歯すると、細いファイルで根尖を突き抜け、#60で楕円形にガバッと開いてる・・なんてことも一応想像してみて下さい。
【根管の数】
先生の想像通り、まだ残っている可能性もありますよね。
太い側枝も。
ですから、臨床経験が短いからこそ拡大視野で作業を行う方がいいと思います。
マイクロスコープを買ってもらう・・のは無理でしょうから、お給料をためて、拡大鏡ぐらい買いましょう。
自分はやっぱり3年目ぐらいで2.5倍のサージテルを買いましたが、それでも世界が全然変わりました。
下手くそこそ拡大視野が絶対必要だと思いますよ。
【出血、残髄について】
出血は残存した細菌の栄養源になり得ますので、根管充填までには止めたいところではあります。
でも残髄は別に気にしなくていいです。
そもそも無数の側枝にだって残髄は必ずしますので。
重要なのは、歯髄を取り除くことではなくて細菌感染を起こさないことです。
歯髄炎の時点では根管に細菌感染は起こしていませんので(一応諸説はある様ですが)、先生が行った通りに、押し込まない様に慎重に感染歯質を除去していって、あとは唾液やプラークに触れさせなければ残髄してもオーバーしても「ほぼ100点」です。
だからラバーダムなどして真面目に抜髄をすれば、90%以上の高い成功率が望める訳です。
今回の場合は、出血を止めることが目的ではなく、自分が根管内に新たな細菌感染さえ起こさなければ十分だと思います。
それで術後の痛みについてはもしも出た場合には頓服を飲んでもらって、そういう可能性があることを事前に説明しておけば信頼関係も崩れないと思います。
あとこれは余計なお節介なのですが、卒後2年目でコンビニ歯科で働いて何かメリットがありますでしょうか?
先生がそういう歯医者を目指すのならそれでいいですが、せっかく真っ白な状態の今、色んなことを疑わずに吸収できる今の時期に、見るべきことやるべきことは他にある気がします。
治療も同じでしょうけど、仕事にも優先順位をはっきり考えるといいと思いますよ。
自分の場合、卒後考えたのは
?勉強
?実技
??がなくて
?お金
の順だったので、格好悪いんですけど、親に頭下げて大学院に行って、親に頭下げてセミナーに行って、今は嫁に頭下げて縁も故もない土地で安い給料ですがラバーが出来て、休みをもらってセミナーに行かせてもらえる医院での勤務をさせてもらっています。
やる気がもっとあれば借金して海外留学とかしてたと思いますが、自分にはそこまでは無理と限界を決めてしまいました。
これが卒後7年ともなると、日々の怠惰な生活にかまけてしまって、落ちていくモチベーションを支えるのに必死ですよ。
>堂々と治療が出来る日を夢見て頑張って行きます!!
その気持ちを忘れず、モチベーションの高い仲間を作って頑張って下さいね。
一緒に何とか盛り上げていきましょう。
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