岐阜市の歯科医院/歯医者 ノアデンタルクリニック

ノアデンタルクリニック・ホワイトエッセンス

HOME
抜髄後、根管からの出血が止まらないのは何故でしょうか?
雪 さん 性別非公開  年齢非公開
2007-10-14 05:08:00
先生方、はじめまして。

歯科医師になって2年目、臨床研修が終わったばかりで、経験が浅いので先生方に教えて頂きたいことがあって投稿しました。


18才・男性

主訴;1ヶ月前から右上の奥歯が冷たいものがしみる。
口腔内はカリエスは少ないのですが、磨き残しが全体的に多かったです。)

右上7番の近心隣接面がカリエスになっていました。

かなり深かったのでエキスカで軟象を慎重に除去していたのですが、露髄してしまったので麻抜に踏み切りました。

レントゲン上は1根管に見えました。

あけてみると、頬側と舌側に1つずつ根管口が見えたのですが、頬側の方はくぼんでいるだけで根管はありませんでした。

根管長をレントゲンで確認し#35まであけたのですが、根管からの出血が止まらなかったのです。

あわててNCとOXで交互洗浄を繰り返したのですが、まったく止まりません。

上顎の7番で1根管のものを見たことが無かったので、他の根管を見逃しているかもしれないと思い、Jで髄床底の溝を染め出して確認しようとしたのですが、出血が止まらないのでよく分かりません。

それならタービンで髄床底を穿孔してしまったのかもしれないと思ったのですが、血は根管からせり上がってきます。

院長に相談してみると、

「1根管で間違いない。出血しているのは残髄しているからだ。#60まであけてきちんとファイリングしろ。」

とのことでした。

院長の言うように、#60まであけて丁寧にファイリングしたのですが、やはり止まりません。

交互洗浄もかなりした(シリンジ5本分)のですが、一向に止まる気配がないので、もうどうしようもなくカラ綿栓を入れて仮封して終わりました。

何故、出血がとまらなかったのでしょうか。
こういう場合はどう処置したらよいのでしょうか。

また、次回来られたときには何を確認し、どんな処置をしたらよいのでしょうか。
先生方、良いアドバイスをどうかよろしくお願い致します。


ちなみに、処置が終わるまでなんだかんだで2時間かかってしまいました。

私が勤務している歯科医院保険メインのいわゆるコンビニ歯科なので、スタッフに大いに迷惑を掛け、患者さんにも申し訳なく、対処できない自分が情けなくてくやしいです。

先生方の様に自分の治療に自身を持って、堂々と治療が出来る日を夢見て頑張って行きます!!
ノア デンタルクリニック・ホワイトエッセンス(岐阜市)の渡辺です。

はじめまして。
2年目ですか。めちゃくちゃ大事な時期ですね。

自分は2年目に今でも師匠と思っている先生に出会えて、良い方向に(たぶん・・)向かわせて貰えたと思っています。

医龍でも、「お前は真っ白い医者のままでいろ」なんてかっこいいセリフがありましたが、夜中に診療のことを思い出して悩んでしまう、今の気持ちを忘れない様にして下さいね。

さて、根管治療については自分も3年目なので多くは語れませんが、また後で井野先生たちが良い示唆をしてくれると思います。

ちょっと思いつくことだけ書いて行きますね。


【根管の最狭窄部の位置の確認について】

出血を少なく済ませるには、というか理想的な根管治療を行うためには、「生体のバリヤー」と呼ばれる「最狭窄部」を壊さないことが重要です。

特に今回は抜髄ということですから、「手付かずのバリヤー」が残っているので、これを壊さないこと、不安ならアンダーで済ませるぐらいが良いと思います。

根管充填の成功率は、オーバーとX線的丁度、アンダーで比較するとアンダーが一番良いのは知っていますよね?

(1973 Bergenholtz, 1990 Ödesjöなどいろいろ)


で今回はX線で根管長を確認したとのことですが、

?X線的な根尖の位置
?根尖孔(major foramen)の位置

最狭窄部(apical constriction)の
?根尖側端(apical end)および
?歯冠側端(coronal end)

に実際はかなりズレがあって、個人差も大きいというイメージを持っておくことが役に立つと思います。

(The accuracy of electronic working length determination.
Int Endod J. 2004 Feb;37(2):125-31. Hoer D, Attin T.
こちらを読むと分かりやすいです。自分が卒後3年目ぐらいに読んだ論文です^^)

つまり、もし仮にX線上で根尖の長さぴったりまで拡大すると、すでに根尖口を突き抜けてオーバーになっていますし、人によっては4mm手前で最狭窄部(apical end)がすでに終わっている場合もあります。

ですから今回はどこまで拡大したのかわかりませんけど、一番出血の少なくなるはずの最狭窄部をすでに超えて拡大している可能性もなきにしもあらず。ということで、#35から#60まで、傷口を更に拡げていたかも知れません。

患者さんが若年者ですから、元々根尖が拡くて止血は時間がかかるかも知れませんね。

で、その場合どうするかと言うと、#60まで拡げるのではなく、仕方ないのでアンダーのまま水酸化カルシウムでも入れてきちんとしたもので封鎖して、終わってしまっても良かったと思います。

(良く言えば圧迫止血?)

生活歯髄切断法もあるぐらいなので、薬剤が疼痛の原因にはなりません。
(因みに疼痛の原因も内圧とは言えません)

で次回はまた一応浸麻をして、X線の長さ、EMRの長さ、手指感覚を頼りに作業長を再度決めれば良いと思います。

拡大は、#35か#40ぐらいまで拡げればNCなどの薬液が十分届く様になるので、それ以上続けるのは根管の破壊ですし、ファイルの弾性がとっくになくなって、もともと湾曲している根管を真っ直ぐにしているだけです。

ステンレススチールのファイルだと、根管の形態に沿うのは#25ぐらいまでだったか・・です。

後の歯根破折の原因にもなりますし、拡大は最小限に抑えるべきです。

仮に今回の患抜歯すると、細いファイルで根尖を突き抜け、#60で楕円形にガバッと開いてる・・なんてことも一応想像してみて下さい。


【根管の数】

先生の想像通り、まだ残っている可能性もありますよね。
太い側枝も。

ですから、臨床経験が短いからこそ拡大視野で作業を行う方がいいと思います。

マイクロスコープを買ってもらう・・のは無理でしょうから、お給料をためて、拡大鏡ぐらい買いましょう。

自分はやっぱり3年目ぐらいで2.5倍のサージテルを買いましたが、それでも世界が全然変わりました。

下手くそこそ拡大視野が絶対必要だと思いますよ。


【出血、残髄について】

出血は残存した細菌の栄養源になり得ますので、根管充填までには止めたいところではあります。

でも残髄は別に気にしなくていいです。
そもそも無数の側枝にだって残髄は必ずしますので。

重要なのは、歯髄を取り除くことではなくて細菌感染を起こさないことです。

歯髄炎の時点では根管に細菌感染は起こしていませんので(一応諸説はある様ですが)、先生が行った通りに、押し込まない様に慎重に感染歯質を除去していって、あとは唾液プラークに触れさせなければ残髄してもオーバーしても「ほぼ100点」です。

だからラバーダムなどして真面目に抜髄をすれば、90%以上の高い成功率が望める訳です。


今回の場合は、出血を止めることが目的ではなく、自分が根管内に新たな細菌感染さえ起こさなければ十分だと思います。

それで術後の痛みについてはもしも出た場合には頓服を飲んでもらって、そういう可能性があることを事前に説明しておけば信頼関係も崩れないと思います。


あとこれは余計なお節介なのですが、卒後2年目でコンビニ歯科で働いて何かメリットがありますでしょうか?

先生がそういう歯医者を目指すのならそれでいいですが、せっかく真っ白な状態の今、色んなことを疑わずに吸収できる今の時期に、見るべきことやるべきことは他にある気がします。

治療も同じでしょうけど、仕事にも優先順位をはっきり考えるといいと思いますよ。

自分の場合、卒後考えたのは

?勉強
?実技
??がなくて
?お金

の順だったので、格好悪いんですけど、親に頭下げて大学院に行って、親に頭下げてセミナーに行って、今は嫁に頭下げて縁も故もない土地で安い給料ですがラバーが出来て、休みをもらってセミナーに行かせてもらえる医院での勤務をさせてもらっています。

やる気がもっとあれば借金して海外留学とかしてたと思いますが、自分にはそこまでは無理と限界を決めてしまいました。

これが卒後7年ともなると、日々の怠惰な生活にかまけてしまって、落ちていくモチベーションを支えるのに必死ですよ。


>堂々と治療が出来る日を夢見て頑張って行きます!!

その気持ちを忘れず、モチベーションの高い仲間を作って頑張って下さいね。
一緒に何とか盛り上げていきましょう。
2007-09-29 05:08:00

この相談の詳細情報
このページは歯チャンネル提供のリンク機能を使用して、原文より一部抜粋したものです。
全ての質問文と回答を見る際は、原文をお読みください。
原文を見る 抜髄後、根管からの出血が止まらないのは何故でしょうか?
メインカテゴリ 根管治療(神経・根の治療) <1081>
専門的な質問 <562>
その他 <1495>
サブカテゴリ 根管治療その他 <295>
根管治療関連 <70>
その他(歯科医師関連) <88>
歯科相談 メインカテゴリ一覧
歯医者さんの探し方 <81>
抜歯(抜けた・抜く予定) <843>
歯の異常・トラブル <520>
歯の痛み <508>
知覚過敏 <31>
虫歯(むし歯) <747>
歯の根っこの病気・異常 <342>
根管治療(神経・根の治療) <1081>
歯茎(歯ぐき)の病気・異常 <455>
歯茎(歯ぐき)の痛み <118>
歯周病(歯槽膿漏) <477>
歯列矯正(矯正歯科) <645>
歯並び(歯ならび) <330>
噛み合わせ(咬合) <166>
歯軋り(歯ぎしり) <76>
顎関節症 <61>
審美歯科・美容歯科 <263>
歯のホワイトニング <69>
口臭 <25>
親知らず(親不知) <245>
上顎洞炎(蓄膿症) <29>
小児歯科・子供の歯 <211>
妊娠〜出産〜授乳 <72>
歯磨き(プラークコントロール) <257>
舌、粘膜、唇の病気・異常 <36>
アレルギー(過敏症) <102>
麻酔 <53>
薬剤 <49>
レントゲン・CT <122>
歯科恐怖症 <36>
治療費・費用 <203>
医療ミス・裁判・不信感 <511>
詰め物、インレー <528>
クラウン(差し歯・被せ物) <990>
支台築造(歯の土台) <179>
インプラント <474>
ブリッジ <464>
部分入れ歯(部分義歯) <151>
総入れ歯(総義歯) <22>
衛生士・技工士・歯科助手 <110>
専門的な質問 <562>
歯科と全身疾患 <112>
海外 <260>
その他 <1495>



このページのトップへ戻る
〒500-8469 岐阜市加納竜興町2-20  ノア デンタルクリニック・ホワイトエッセンス
TEL:058-216-4618 日祝休診