通常のワイヤー矯正の場合、月に一度程度でワイヤーを硬いものに交換したり、ゴムをかけたりして歯に矯正力をかけていくのですが、1歯1歯に対して矯正力を細かく調整するということは難しいというか、術者の感覚的なものになります。
基本的にゴムなどは劣化も激しい訳で、初日よりも2日目、3日目とどんどん力が弱くなり、1ヵ月後にはかなり弱くなっていて、理想は逆ですから、それほど繊細なコントロールは出来ていないと考えて良いのではないかと思います。(それでも通常問題にはならないレベルです)
一方でマウスピース矯正の場合は、模型上(本物の模型だったりバーチャルの模型で)で歯一本一本に対して、”最大”0.○○mmという歯の動きを作って、それをパラパラ漫画の様に、何週間かで1枚ずつ動かしていくという手法になりますので、意図してしようと思えばワイヤー矯正よりも繊細に、細かい矯正力で一定に近い力のかけ方をすることが理論上可能です。
当院ではクリアアライナーではなくて、インビザラインというマウスピース矯正のシステムを使用しているので、そちらで先に説明しますが、インビザラインの場合はバーチャルの模型上で、最大0.25mmの移動距離を設定し、2週間毎で交換します。
これは生物学的にもだいぶ余裕をもたせた、つまり、本来ならもっと大きくでも動かせるということなのですが、安全マージンを考えた移動距離で、なおかつ実際にはもっと控えめの動かし方をしていることが多いとのことです。(もっとも、主治医の判断で最大速度で動かしていくということも可能です)
クリアアライナーは今調べてみたところ、最大0.75mm前後を約1ヵ月毎の交換ということなので、歯にかかる力はインビザラインと較べれば強そう、ということは言えるかも知れません。
ただくどいですがあくまでも"最大値"ですから、1回あたりの移動距離をもっと小さく設定することは可能なはずです。
(インビザラインは移動距離をCG上で設定するのでいくらでも微調整出来ますが、実際の模型に手を加えて作製していくクリアアライナーではコンマ1mm単位の調整などは実際は無理ではないかと想像はします・・)
いずれのシステムについても、ワイヤー矯正と較べてどうなのか?という回答についてはモノが違いすぎて難しいですね。
それと、
>私は現在矯正中なのですが、歯茎がだいぶ下がってしまい、歯の根もだいぶ見えてきてしまって、ワイヤーからクリアライナーに変更を提案されたところなのです。
ということについてはもう少し考察が必要かなと思います。
力が強すぎるから歯ぐきが下がった、とは考えにくいかなと個人的には思います。
歯を大きく動かし過ぎる場合(特に非抜歯矯正で、元の歯列よりも外側に歯を動かしてる様な場合とか)とか、あとはワイヤーの装置が邪魔するために歯ブラシが歯ぐきに強く当たりすぎていて、いわゆるオーバーブラッシングの状態で暴力的に歯ぐきが下がってきているとか、あるいは単純に、重なっていた歯がまっすぐ並ぶだけでも見た目上歯肉は下がりますので、正常な変化の範囲なのを心配されているだけなのか、その辺りが分かりかねます。
ですのでワイヤーからクリアアライナーへの変更自体に効果があるのかないのかについて、個人的にはいまいち想像がつかないですね。
客観的には、効果があるかは分からないが、害まではたぶんなさそう、という印象です。
とりあえず主治医の先生が今一番状況をよく把握されていて、経験上そのような方針を立てたのだと思いますから、信用する他ないのではないでしょうか。
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