根の状態を見て、それが残せると判断するか残せないと判断するかは先生ごとでも結構差が出ますので、かなりしつこく残す方の立場からのコメントをします。
差し歯の条件として他の先生から歯冠歯根比(差し歯の長さと歯根の長さの比率)の話が出ましたが、確かに教科書的にそういった話はあるものの個人的には無視して問題ないと思います。
最も重要なのはフェルールで、分かり易い様に簡単にご説明すると、歯肉より外に高さ2mm程度、厚み1mm以上でぐるっと一周健康な歯質が残っていればほぼ、全ての歯科医師が差し歯に出来ると認めてくれる安全域と考えられます。
ところが臨床的にこの様な状態の歯というのはなかなかないのと、プラムさんの場合もその様な状態からはかなりかけ離れていることが想像出来ます。
その場合、保険診療から外れてくるのでされる先生は限られてきますが、歯肉と歯根の周りの骨(歯槽骨)を削ることで健康な歯質でフェルールを作ることが出来るかも知れません。
参考
歯の構造
クラウンレングスニングと言う方法です。
ところがこの方法のみを行うと歯肉が凹み、長い差し歯となって歯磨きがしづらく、関係ないとは書きましたが歯冠歯根比もいかにも悪くなる(差し歯の長さに対して歯根が短い)ので、セットで歯根を引っ張り出した方が良いです。
これはエクストルージョンという方法になります。
歯根はどのみち短くはなりますが、エクストルージョンを合わせることで差し歯の長さも短めに出来るので、結果的に歯間歯根比は改善するというメリットもありますし、歯肉の凹みも防げるので見た目も良く、歯磨きもしやすくなります。
ですがここまでしても理想的なフェルールの獲得までは日本人の場合大抵は難しいです。
その場合は"妥協"が必要で、将来に不安を残すことにはなりますし、この辺りの予測は歯科医師ごとの経験や勘に頼るしかなく、「思ったよりもずっと長持ちするかもしれないけど長持ちしないかも知れない」ということに多くはなります。
仮にフェルールの問題がなんとか解決したとしても、さがら先生が指摘された"根管治療"が失敗してしまってはすべて台無しですし、被せものがいい加減でもすぐに問題が起こってしまいます。
以上を踏まえると、
・クラウンレングスニング
・エクストルージョン
・根管治療
・被せもの
(・その後のお手入れ)
が全て高いレベルで行われないと難しいので、歯科医院側が提供出来る技術の問題だったり、患者さんが支払えるコスト(+受け入れられるリスク)の問題かで実際には抜歯と判断するしかないということが多いと思いますよ。
(※かえって分かりにくいかも知れませんが、歯肉に埋もれていたぐらい深いむし歯だった歯根を残したケースの写真を添付しましたのでご参照下さい。)
具体的なコストについては医院ごとでかなり幅があるかと思いますが、当院の場合ですべて自費で行ったとすると、インプラント一本入れるのと大差ない様な金額(30万円前後)になってしまいますので、費用対効果的にも皆さん迷われるところではありますね。
あらゆる治療法と比較しながら、主治医の先生とはよく相談されて下さい。
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