簡単に一言で何回、ということはないのですが、フッ化物の応用も治療の1部分と理解して頂くとイメージしやすいのではないかと思います。
つまり、放っておくとむし歯になりやすいタイプなのかそうでないかの評価(リスク評価)が先に必要で、その評価の結果を元にフッ化物応用の推奨回数を決めていく感じになります。
フッ化物の応用方法にも歯はさんがお書きの様にいくつか考えられますから、その方の取り入れやすい方法とタイミングで実施していくのが理想だと思います。
それで通常、成人がむし歯予防の目的で使用する程度のフッ化物については副作用についての確かな報告はありません。
しかしながらどの様な物質でも極端な量を摂取すれば毒になる可能性がありますから、必要以上に過剰摂取する必要もないと思います。
(水でも酸素でも、取りすぎれば中毒量・致死量が存在する様にフッ化物も同じです)
フッ化物を利用するしないに関わらず、歯磨きは1日1回よりも2回以上の方がむし歯の数が少ないことは分かっています。
(2回と3回、あるいはそれ以上の差は私が知る限りでは明確でない様です。)
口臭、歯周病のことなども考えれば歯磨きは誰でも毎日2回以上行うべきということは言えますし、その時にフッ化物含有の歯磨剤を使用するのは一般的に推奨するべきと考えられます。
ですからこれがリスクの低い方の最低フッ化物利用回数と言っていいと思います。
逆にむし歯リスクの高い方のフッ化物応用推奨回数について、明確なエビデンス(科学的根拠)というのはおそらくありませんが、フッ化物の利用について"超"積極的なスウェーデンの某教授の数年前の講義でさえも、「1日4回程度」とお話されていた様に記憶しています。
歯はさんはご存知だと思いますが、フッ化物含有の歯磨剤の使い方としてもフッ素を敢えて口の中に残す使い方(イエテボリテクニック)を行った場合は「1回」にカウントすれば良いと思いますが、歯磨き後にコップの水をたっぷり使ってブクブクうがいをしていれば0.5回分ぐらいかも知れません。
ブクブクうがいでもリスクの低い方ならをれを1日2回行っていればおそらく十分でしょうが、むし歯リスクが高いならイエテボリテクニックを応用した歯磨きを例えば3回と、+1回寝る前にフッ化物洗口液による洗口をするのは現実的に可能だと思います。
あるいは歯磨剤が苦手だったり、イエテボリテクニックが苦手という方もみえますからそういう方は代わりに歯磨きの後に洗口でも良いでしょうね。
さらにもっと言えばスーパー上手な歯磨きテクニックや、糖質の摂取量や回数を徹底的にコントロールしていくことでもフッ化物の利用回数は増やしたり減らしたりを検討していくことが可能です。
ややこしい書き方になりましたが、まとめると
・必要以上に使うこともない
・"超"推進派でも1日4回程度を推奨
・その人にとって、どの程度が最低必要かを判断するには@リスク評価を行い、A他の手段(プラークや糖質のコントロール)と合わせて、総合的に判断。
と言った感じです。
あと櫻井先生の回答について少し。
「クラックカリエス」と言うのは、現在学術用語にはなっていないと思います。
おそらくTCHやブラキシズムによって歯にクラックが発生し、そこにプラークが停滞することで引き起こされるカリエス、というのを想定されているのだと思いますが、本当にそういったことが起きるのかどうかはまだ学術的証明がされていない様に思います。
存在するとしても、作用メカニズムから考えればフッ化物の利用は有効で、むしろ重要と考えられます。
もう一つ、歯周病予防への考え方のシフトですが、歯周病になってしまった場合次には必ずむし歯(根面カリエス)のリスクが高まります。
また健康状態や生活リズムの変化などでも、リスクの高低は生涯に渡って変化します。
当院でもむし歯リスクがほぼない方だと、歯周病リスクの高低に関わらずフッ化物の利用やむし歯予防を特には説明しないことがごく稀にはありますが、基本的にはむし歯予防は誰でも、生涯に渡って行なっていくべきだと思います。
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